今回は他院で治療をしているものの、歯ぐきの腫れ、痛みが治らないとのことで治療を始めた方の例です。
下が初診のレントゲンです。
丸の部位の歯ぐきに異常がありました。
根の治療を始めましたが・・・
根の先に、元々の神経の道筋とは違うところに穴があいているのがわかりました。
通常は抜歯する例で、私の判断も抜歯だったのですが、患者さまができるだけ保存する治療を望みましたので、保存する治療をトライすることにしました。
まず神経の治療を、元々の道と、穴があいているところ、両方に対して始めました。
実際のお口の中です。
残っている歯の壁が薄く、歯の頭が短いことが分かります。
治療を進めても、改善はしているものの違和感が残り、根の先端から滲出液というものが止まらず、炎症が持続していることが考えられました。
そこで一度抜歯を行い、根の外で直接感染部位を取り除き薬を入れて元に戻す、再植と歯根端切除、逆根管充填を選択しました。
このままでは抜歯時に歯が折れてしまう可能性があるため、先に薬を根の中まで流し込み、土台を立て補強しました。
上の写真の白いのが薬です。
根の先のほうで二股に分かれ、薬が根の先端まで到達し、外まではみ出しているのがわかります。
上の写真の白くなったところが土台になります。
そこで歯が折れないように慎重に抜歯を行い、実際抜去した歯が下の写真です。
土台を立てたお陰で、土台は壊れてしまったもののきれいに抜歯ができました。
根の先からピンク色の薬が2か所から出てきているのがわかります。
根の先を約3ミリ削り、MTAセメントという薬を入れた状態です。
歯を抜いた状態が長く続くと予後が悪くなるため急いで治療を進めます。
治療前の状態で歯ぐきのラインくらいまで歯がありませんでしたので、歯の頭の高さを得るために元の位置より少し浮かせた状態で戻し、両隣りの歯と固定しました。
抜歯してから約8分で戻すことができました。
術後2カ月の状態です。
まだ歯と骨との間にややスペースがあり根の先の骨も回復していませんが、腫れや違和感はもうありません。
術後13カ月です。
根の先の膿の袋もなくなり、歯も骨とくっつき良好に経過しています。
抜歯してインプラント、という選択肢もありますが、天然の歯に勝てるものはありません。
私自身、この症例と向き合い、厳しい状況でも歯を保存する方法を模索するべきだということを改めて学びました。
湘南つばめ歯科
院長 松崎 等